当編集部でも注目している銘柄、ティアンドエス(4055)が11月4日に以下のリリースを出した。
令和2年度戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)のお知らせ
このリリース、かなり強烈である。
東北大学 CIES が、Society5.0※ 2 の実現を目指して国際産学連携体制で進めてきた、低消費電力かつ低価格な「スピントロニクス/ CMOS Hybrid LSI 技術」が、現在世界の潮流技術となっており、従来のシリコン技術に比べ消費電力を 1/100 以下に低消費電力化する事が可能です。
簡単にいうと「この技術が開発されれば、いろんな電化製品の消費電力が1/100くらいになる」ということだ。
注目すべきは以下の部分。
本技術をさらに、低消費電力アプリケーションプロセッサ事業化へ展開 して行くためには、LSI 回路設計における PDK(プロセスデザインキット)や IPライブラリの開発、および LSI を動かすための FM(ファームウェア)やソフトウェア開発キット(SDK)の準備が急務となっています。つまり、新しい技術が世に出るためには、必ずしも LSI の性能だけで決まるのではなく、PDK や SDK 等の開発環境整備による回路設計とソフトウェア開発効率向上や、コスト低減も大きな事業化の鍵となります。本研究開発事業では、パワースピン㈱がハードウェア(回路設計、PDK、IP、設計ツール)開発を行い、東北大学 CIES はそのハードウェア開発につなげる基盤技術(デバイス パラメータ抽出技術、特性解析技術等)の提供と事業管理を行い、ティアンドエス㈱がソフトウェア(FM/SDK)開発を行うことで、3者が一体となってスピントロニクス/CMOS Hybrid LSI にかかる回路設計/システム設計/ソフトウェア実装効率の向上を実現する技術基盤の構築を進めます。
要約すると「そのメインの技術を事業化・量産化するための技術基盤を作ります」ということである。
もっと簡単言うと、
「消費電力を1/100以下にする技術を量産化するために必要な準備を、経産省からお金をもらってやります」
というのがこのリリースの意味するところだ。
ちなみに、このサポインというのは「製品化につながる可能性の高い研究開発、試作品開発等及び販路開拓への取組を一貫して支援する事業」であり、少なくとも経産省はこの事業に対して「製品化の可能性が高い」と判断していることがわかる。
消費電力が1/100以下になるとどうなるのか?
問題はここだ。
これにより、このリリースのインパクトが正確に読み取れる。
例えば、車の自動運転技術。
完全フルオートの自動運転はまだ実現できない。
実は、センサーやカメラなどの技術は完成の領域に近づいているのだが、問題はそれらの莫大な情報量を一度に処理するほどの電子基板を車に積むと、消費電力が跳ね上がり、とんでもない高熱を発してしまうと言われている。
仮に、この技術が完成し、消費電力が1/100以下になれば、完全自動運転の車が道路を走る未来が近づくわけだ。
また、当たり前だがスマホの充電も長持ちするようになる。いま1日1回充電しているとすれば、100日に1回充電すればよくなる計算だ。
それくらいの消費電力なら、電卓と同じように太陽光で動くようになるかもしれない。
そんな可能性を秘めているのがこの領域なのだ。
この領域で、東北大は強い
つい最近、日本版の世界大学ランキングで東北大学が一位になったと報じられた。
東北大学は、この半導体分野ではかなり先進的な研究をしている。
http://www.cies.tohoku.ac.jp/program/joint_research.html
当然、この技術は世紀の大発明になりうるものなので、世界中の企業や研究機関が実用化に向け切磋琢磨している状況だ。
投資家目線で着目すべき点は?
この技術が製品化したニュース、もしくは準備に入る段階のニュースが入った瞬間に、ティアンドエスの注目度が大きく上がるのはお分かり頂けるだろう。
そもそも数年以内には実現されるであろうと見込まれている技術だ。
こまめにティアンドエスのリリースはウォッチしておくと良いはずだ。