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かっこ株式会社の事業概要と将来性やリスクは?

かっこ株式会社は、東京証券取引所マザーズ市場への新規上場が予定されている、ECサイトのセキュリティに特化した、クラウド型サービス企業です。同社の事業概要、将来性、事業リスクについてみていきます。

会社概要・事業構成

かっこ株式会社は、「未来のゲームチェンジャーの『まずやってみよう』をカタチに」という経営ビジョンのもと、データサイエンス技術を活用し、アルゴリズム(仕組み)及びソフトウエアを開発・提供することで、企業の課題解決を行う「SaaS(クラウド)型アルゴリズム(仕組み)提供事業」を展開しています。

・不正検知サービス「O-PLUX」「O-motion」

「O-PLUX」は、ECにおける注文データを分析することで、代金未回収となる可能性の高い注文を、リアルタイムに検知するクラウド型の不正注文検知サービスです。AI・統計学・数理最適化などの技術で独自の検知モデルを構築し、日本語独特の表記ゆれを名寄せする機能や、注文のあった端末を特定するデバイス認証などの機能により、単純なブラックリスト照合や担当者の目視による審査ではなしえなかった検知精度を実現しています。

また、購入時にパスワード入力等を求める本人認証サービスと違い、画面を移動することなく審査可能なため、購入者の操作性を損ねることなく不正対策が可能です。「O-PLUX」は、これらの機能・性能に対する評価は高く、日本国内のECサイトにおける有償の不正検知サービスの導入件数№1となっています。

「O-motion」も、会員サイト等において、本人になりすますような不正なアクセスをリアルタイムに検知するクラウド型の不正アクセス検知サービスです。独自のデバイス情報・操作情報を駆使した不正判定により、従来型の検知では判別しきれなかった不正も判定・検知が可能です。その性能を活用し、インターネットバンキングにおける不正送金や、不当なチケット買い占めによる高値転売の対策として、金融機関、大手チケットサイト等に導入されています。

・決済コンサルティングサービス

このサービスは、主に後払い決済を提供するネット決済事業者に向けて、同社の後払い決済に関するノウハウをもとに、決済システムの提供・後払い決済事業の立上げ・運用のコンサルティングを行っています。

後払い決済は、消費者にとって便利な反面、その取引方法を提供する決済事業者にとっては、代金未払い等のリスクが高く、高精度な審査が不可欠となります。同社では、「決済コンサルティングサービス」に加えて、後払い決済の審査システムとして「O-PLUX」を機能させることで、後払い決済の構築をワンストップで支援出来ます。

・データサイエンスサービス

同社のこのサービスは、マーケティングや業務生産性などの課題に対し、企業が保有するビッグデータを、AIや統計学、数理最適化等データサイエンスなどの技法を用いて分析し、アルゴリズム(仕組み)を開発・提供するサービスです。具体的には以下のような事例があります。

【アパレルメーカー導入事例】

アパレルメーカーの店舗とECの全購買データをもとに、顧客の購買行動を分析し、「買い方」別に顧客の特徴をクラスタリング(集団にまとめる)し、月次での購買期待値順会員リストや、クラスタ別の施策、コミュニケーション立案材料などを提供しています。

【コールセンター導入事例】

コールセンターの翌月の日・時間帯別の需要予測を行い、現状の対応能力をもとに、目標の応答率と、従業員の希望勤務シフト、労働条件といった複数の制約条件を満たす人員配置計画を計算し、自動提供しています。

 

今後の将来性とリスク

・ストック収益の拡大

同社の主力サービス「O-PLUX(オープラックス)」は典型的なストックビジネスのため、顧客数の増大に伴い、安定的な収益源となります。クラウド形式で提供するため、システム機器等一定の投資は伴うでしょうが、低コストで拡大できる事業であり、今後も同社の「金のなる木」になるでしょう。

・抱き合わせ販売の有効性

創業者自身が体験してきた決済ビジネスのノウハウと「O-PLUX」のセット販売による決済コンサルティングサービスは相乗効果が高く、片方だけを採用している企業に対して、もう片方のサービスを導入したくなる、ワンストップサービスの利便性が期待できます。

・アライアンス先の支持と拡大

ECパッケージ・ショッピングカートベンダーにとって、同社のサービスは欠かせない存在になっていくでしょう。このままいくと、デファクトスタンダード(事実上の業界標準)になっていく可能性があります。そのため、アラインアンス先も獲得しやすいでしょう。短期間のストックビジネスを安定させ、ブランドイメージを確立して追随企業に対する参入障壁を作るためにも、アライアンス網を早期に広げると良いでしょう。

・他産業への転用

同社ではAIや統計学、数理最適化技術を活用したビジネス課題解決型のビジネスを始めていますが、本来最も得意とする検出技術を他の産業分野に応用するビジネスも、大いに期待できるでしょう。

・模倣ビジネスに対するリスク

インターネットのセキュリティソフトやツールが拡大したように、いずれはビジネスモデルを模倣する企業は間違いなく出現することが考えられます。不正検出パターンは極秘にしても、検出方法など、フレーム的な部分はビジネスモデル特許の取得が望ましいでしょう。

・システムダウンのリスク

同社のサービスは24時間365日の稼働が要求されるサービスであり、システムメンテナンスのための停止も許されません。同社のサービスでは、そもそもシステム基盤をインターネットに依存しているため、サイバー攻撃によるシステムダウン等のリスクもあります。同社の採用しているAmazonのAWSサーバーですら、過去にシステムダウンにより、世界規模で決済サービスに障害を与えました。多重の対策が求められます。

まとめ

かっこ株式会社の事業に対するニーズは、今後も拡大傾向が続くと考えられますが、ニーズの拡大は競合や模倣を生みます。アライアンスを強化しながら、主力商品である「O-PLUX(オープラックス)」の収益ストックを拡大し、研究開発費を確保しながら、そのアルゴリズム(仕組み)を他の産業に転用していくビジネスモデルが出来れば、更なる発展が望めるでしょう。

 

【参考】かっこ株式会社 新規上場申請のための有価証券報告書

https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu0000053g80-att/12Cacco-1s.pdf